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2007年01月18日

職人の心意気。

ズボンの裾あげのご依頼がありました。

お預かりした時に気になっていたのですが、どうやらこのお客様、ご自分でウェスト出しをやったようです。
手縫いで素人がやったらしく、ちょっといびつな仕上がり。
このままだと強度も無いし、どうしようかなあと思っていたんです。

しかしその前にまずは裾あげ。
いつものように、当店でお願いしている方へ裾上げを頼みました。

この方はスーツを1から仕上げる事が出来る方で、その仕事はまさに職人技。
新品よりも綺麗に直してしまうほどすごい人なんです。
前にポケットの修理をお願いしたら、修理した方のポケットの方がきれいだった事がありました。
新品だからってちゃんとしているわけじゃないんですよね。

ちゃんとした人がやればここまで綺麗になるか、とまさに思ったものです。

そんな方なので、いつも仕事がたんまり。
お忙しい所を無理言ってお願いして急いでいただきました。

出来上がってきたズボンの裾を見ると、やはり任してよかった!と思えるほどとても綺麗な仕事です。
たかが裾あげと思うかもしれませんが、しっかりと上げられていると強度も違いますしね。
テープであげるよりも全然良い。

ふと、ズボンを見てみると、お尻の所が綺麗に直っています。
あれだけいびつだったお尻の割れ目の所が、綺麗に縫われている・・・。

もしや・・・・・・・・・、!!!!!

そうなんです、ズボンの裾上げをした時に気付いて直してくださったんです。
やはり気になっていたようで、このままでは使い辛いだろうとやってくださったみたい。

修理代を払おうとすると、裾あげの分しか要らないと言います。
そんな訳には行きません、と言うのですが、受け取ってもらえない。

『自分が気になったので、直しただけです。』

とおっしゃるんですね。
職人の心意気って奴でしょう。

仕事としてやっている以上、お金を頂かないといけません。
しかしお金の為だけに仕事をしているという訳でもないんですよね。
きちんとした仕事をしたい、ちゃんと直したい、職人にはそんな気持ちが強くあります。

今回はお言葉に甘えさせて頂きました。
明日、お客様の所へ届けに行きますが、事情をお話するつもりです。

こんなね、気持ちの良い職人さん、最近はなかなかいないですよ。
本当に、大事にしないとね。
気持ちでやってもらったものですから、甘えてばかりはいられません。

プロの心意気、私もしっかりとやっていきます。

投稿者 boribori : 2007年01月18日 23:31

コメント

>『自分が気になったので、直しただけです。』
これ、わりかりますね。
寝心地が悪くなるというか、しこりが残るというか。

でも、ちゃんと技術(レベルに合わせて)をお金に還ることも必要なんだとも思うようになってきました。

投稿者 : 2007年01月20日 18:22

真君、まいど。

職人として気持ちわかるでしょ?
そう、なんか気持ち悪いんだよね。

ただ、今回のはそれとはまたちょっと違うようです。
気持ち悪い、と言うだけでなく、粋とでも言いましょうか。
かなり着込んだズボンでしたから、何か感じ取ったのかもしれません。

最近、クリーニング業界でも技術にあわせた料金というものが見直されています。
今までサービスでやっていた事を、責任ある仕事とするために料金を頂く様になって来ました。
なあなあ式と違い良い方向だと私も思います。

責任ある仕事でお金をもらうという事と、ちょっとした気持ちでやってあげるという事、この区別をどうするか?今後大いに議論を呼びそうな気がします。
クリーニング屋さんの悪いくせ、偏り過ぎなきゃいいんだけどね。

どんな仕事でも『遊び』は必要です。

投稿者 boribori : 2007年01月20日 23:57

きれいにして返して当たり前

そう思って仕事をし続けてきました。だから、毛玉とりもしみ抜きもうちのクリーニング料金に含んだ形をとっています。これからも、そのスタンスはかえるつもりもないのですが、

たまに、「ほかのクリーニング店だとしみぬき代がかかるのに、お宅はかからないの?ならしみぬきの作業が必要ないときはその分儲けているわけだね」なんて心無いとてもせつないことを言われて、とても悲しい気持ちになることもあります。
ごくまれなケースですけどね。

どこで線引きをするのか。
難しい  です。

まあ、どんなこといわれても、自分のクリーニングをするだけですよね。

投稿者 マッコクジラ : 2007年01月23日 18:07

マッコクジラさん、まいどです。
ブログ、読ませて頂いております。

なかなか難しいですよね。
立場によって解釈が変わってきますから、確かにそうともいえるかもしれない・・・。

でも逆に考えると、通常のクリーニングが基本で染み抜きがサービスとすると、染み抜きがあるときはお店が損をしている、とも言えますね。(笑)
もちろん、そんな意識でやっていないと思いますが、見る人の立場や意識で、色々な解釈が出来てしまいます。

仕事って難しくて、料金内の仕事だけこなしていればいいことって本当に少ないんですよね。
やはり料金以上の仕事をすることのほうが多くて、だからといって全部お客様に請求していたら、キリが無いという現実もあります。

全部ひっくるめていくら、って昔からやっていますからねえ。

昔は、人の仕事を結構評価してくださっていたんだと思います。
当たり前ではなく、お客様もお店側も互いに感謝していた時代がありました。

だから、込み込みでいいサービスが出来たんですよね。

でも、それがサービスではなく当たり前として捉えられ始めると、状況が変わってくるようです。
昨今の有料化はそんな流れなのかなあと思いますね。

お店もお客様も、気持ちがなくなると、最後はお金になっちゃうのかなあ。
個人的には、お客様の要求が厳しくなるたびに、お店のサービスが有料化されているように感じています。
結果的に損をしているんではないかなと。

難しい問題ですね。

投稿者 boribori : 2007年01月24日 19:05

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